◆◆◆日記◆◆◆

2015年06月21日 の記事一覧

■「MADE IN EARTH」のSS

わたしが昔に描いた読みきり漫画、「MADE IN EARTH」の、SS(ショートストーリー)を頂きました!!
嬉しい!!(≧▽≦*)
もうご存じない方がほとんどでしょうけれど、頂いちゃったので、嬉しくてイラスト付けて、アップさせていただきます!

(↓「MADE IN EARTH」って、こういう漫画  2002~2003年作品)
w_made_1.jpg

書いてくださったのは、柚希実さんという、ネットで小説を発表されている方。
(柚希実さんホームページ)http://fayerie.rdy.jp/

10年以上前にネットでお知り合いになって、柚希さんの小説のイメージイラストを描かせていただいたり、
(↓こんなのとか)
six_big.jpg

当時にも、柚希さんが「MADE IN EARTH」のSSを書いてくださったのでホームページにアップしたり、仲良くさせていただいておりました(*^^*)
(わたしがその時つけたイラスト↓)
yuzu_1.jpg

そしてこの度、その時書いてくださったSSの「完全版」を書いて送ってくださったのです!
本当にありがとうございます!!\(>▽<)/
楽しくイラスト描きました♪♪

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「MADE IN EARTH」 SS
『一日遅れのチョコレート』

「お兄ちゃん、遅いなぁ」
 すっかり冷めてしまったスープの鍋に視線を投げて、由羽は心配げにため息をついた。
 いつもなら兄の進は仕事を抱え、ほとんど定時に寮の部屋へと戻ってくる。遅くなることもあったが、それでもここまで遅くなることは滅多になかった。秒針がコツコツといつもより大きな音を立てて、由羽に呼びかけている。
「もう夜食の時間だよ」
 時計を見上げてそうつぶやきつつ、だが由羽の気持ちは夕食に向いてはいなかった。同じテーブルの隅にある、綺麗に包装された薄い箱に視線を注ぐ。
 今日は2月15日。昨日進からぶっきらぼうに渡されたその包みの中は、チョコレートのはずだ。その包装紙にある店の名前は、美味しいと有名な洋菓子店のものなのだ。
 その店のチョコのことは、由羽も評判を聞いて知っている。たぶん間違いなく本命チョコだろう。一人で食べてしまったら、その人に悪い。せめて一つは進に食べて貰おうと、由羽は思っていた。
 それにしても、いったい誰に貰ったんだろう。由羽は研究所の女性職員一人一人を、頭に思い描いてみた。
 三木さん? でも、三木さんはチョコを配るような、そんな雰囲気の人ではない。それに、バレンタインは女の子の祭典よ、と男性そっちのけで一緒にチョコを食べながらお茶をしたのだ。由羽には、そんな三木が進にチョコを渡したとは思えなかった。
 だったら。三木ではなく、他の誰かかもしれない。
 でもそういえば。毎年、進は差し出されるチョコを、義理チョコと明言されても、受け取ったことはなかった。掃除のおばさんのチョコも。食堂のおばさんのチョコでさえも。
 由羽は、進が本命らしきチョコを受け取ったこと自体、重たい意味がありそうに感じた。やっぱり一つはどうしても食べて貰わないとと思う。
 恋人? もしかしたらもっと先の話しも? 今だってその人とデートをしているのかもしれない。
 ずっと進と二人で暮らしてきた。でも今までと同じように過ごしていけると、思ってはいないはずだった。だが、いざ進に恋人ができたかもと思うと、想像していた以上に寂しく感じる。
 由羽がため息をついたその時、玄関のドアがガタッと音を立てた。そのドアに駆け寄って、外にいる誰かにぶつからないよう、そっと薄く開ける。
「早く開けろ」
 ドアの隙間から、進がたくさんの書類を持って立っているのが目に入り、由羽はドアを大きく開いて進を通した。小走りで追い抜いて、進の部屋のドアも開ける。
「腹へった」
 そう言い残して机に向かった進を気にしながら台所に戻り、由羽はスープを温め、パスタを茹ではじめた。ミートソースの入ったフライパンに火を入れ、珈琲メーカーのスイッチもつける。進がどこかで誰かと食事をしてきたのではなかったのだと思うと、少しホッとした。
 ミートソースをたっぷりかけたパスタと、熱いスープをトレイにのせ、進の好みの量だけチーズとタバスコをかける。冷蔵庫からしっかり冷えたサラダを出し、ブラックのコーヒーも添える。それともう一つ。破れないように包みを解いたチョコレートを、トレイの端にのせた。
「おまたせー」
 進に声をかけると、由羽は開けっ放しだったドアを通って部屋に入り、机にスパゲティのトレイを置いた。進の視線がチョコの箱に止まったのを感じ、見せてはいけない物を見せてしまったかのように、由羽は慌ててチョコを手にとって胸に抱きしめる。
「あ? まだ食べてなかったのか」
 進は一瞬だけ視線を由羽に向けると、パスタを手にした。
「一緒に食べようと思って」
「チョコなど食わん。メシと一緒ならなおさらだ」
 間を置かずに帰ってきた言葉に、由羽はそれでもどうしても食べてもらわなければと思う。
「でも、バレンタインに貰ったんでしょう? 一つは食べてあげないと……」
 胸が破裂しそうなほど緊張して言ったその言葉に手を止め、進は由羽を振り返った。
「俺がお前に買ったんだ。なんでもバレンタインだからとかで研究所の売店が仕入れたらしくてな」
 それだけ言うと、進はまたパソコンの画面に向き直り、パスタを頬張った。
sasie1.jpg

 進の指でカチャカチャ動き出したキーボードの音に安心して、由羽は箱を開けるとチョコを一つ口に入れた。進が選んだのだと納得できるビターな味がする。ドキドキと鼓動を打っていた由羽の気持ちも、そのチョコと一緒にゆっくりほぐれていく。
「ああ、それと」
 進が振り向きもせずに言ったその言葉に、由羽は幸せな気分で視線を合わせた。キーボードの音は途切れることなく続いている。
「俺がチョコを受け取らんのは知っているだろう。受け取るなら現物だ」
 思わず飲み込んでしまったビターなチョコレートは、由羽のノドにほんの少し苦く感じた。

 翌日。
「俺はここにいない」
 謎な言葉を残し、進が側の部屋に消えた。目を丸くしたままの視界に、三木が入ってくる。由羽は、手を振りながらこちらに近づいてくる三木に、小さく会釈を返した。
 同時に、後ろからハイヒールの音が響いてきた。
「そこの人、進さんを見かけなかったかしら?」
 その声に振り返ると、研究所にはそぐわない赤いドレスを着込み、濃い化粧をした女性が駆け寄ってきた。
 顔の近さに口ごもった由羽を庇うように、三木が割って入る。
「今、外に出てくるって玄関ホールに行ったわよ」
「ありがと! じゃあ!!」
 スカートの裾を翻し、その女性は香水の匂いを残して走り去っていった。
 あっけにとられて後ろ姿を見送った由羽に、三木が微笑みかける。
「受け取るなら現物だ、なんて言うから」
「兄が、ここでもそんなこと……」
 由羽は顔が熱くなった気がして、手で頬を覆った。三木は、家でも言ったの? と口に出して苦笑で肩を揺らす。
「問題はね、そんなことを言ったら、それなりの女が押し寄せる優良物件だっていう自覚が無いことよ」
「優良、物件……?」
「そんなことを言う男に女性は寄ってこないと思ったんでしょうね」
 その言葉に由羽はハッとした。兄が現物なら受け取る人間だと、どうして思ってしまったのだろう。どう考えても兄はそんな人間ではない。言葉を信じるよりも、中身を信じるべきだったのだ。
「でも、身体でどうこうなんて考える次元の違う女もいるって分かっただろうから、もう二度と言わないはずよ」
 三木のよどみのない笑顔を見て、由羽の心がざわついた。三木さんは兄のことを信頼して疑いもしていない。もしかしたら三木は兄のことを好きなのかもしれない、そう思ったからだ。
 由羽の不安そうな顔を読み取ったのか、三木は片目をつむってみせる。
「私はあなたの義姉になりたいと思ったことは無いけど、お姉さんにはなりたいと思っているのよ」
 見透かされたと思い、由羽の胸がドキリと音を当てた。でも、この人になら見透かされてもいいのだという安心感が、心を満たしていった。
 三木の優しい笑みで細くなった瞳に、由羽は心の底からの笑みを返した。
sasie2.jpg

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